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○こちら特撮情報局 特撮男優・女優スペシャルインタビュー 第1弾
 
賀川ゆき絵 ロングインタビュー その1
賀川ゆき絵 その1
【大映時代・スター市川雷蔵氏との出会い】
―――
 本日は、歌手であり、また女優でいらっしゃいます、賀川ゆき絵さんにお話を伺います。どうぞ宜しくお願いします。
賀川
 宜しくお願いします(微笑)。
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 今、お手許にもお写真(大映映画「ガメラ対バルゴン」島娘役)があるわけなんですが、まず大映でデビューされた経緯からお教えください。
賀川
 ハイ。(十代の頃)ある方から頼まれて、エキストラのアルバイトをやっていたんですが、京都でスカウトされて、その後正式に大映ニューフェイス第四期生として、スタートしました。当時大映の研修所で教えてくださった先生方は、市川雷蔵さんをはじめ大御所の方ばかりでしたね。立ち回り、乗馬、お茶(茶道)、お花(華道)、日舞なんかをやって、一年間で卒業しました。その後ニューフェイスとして大部屋に入るわけですが、市川雷蔵さん主演の映画「眠狂四郎」で芸者役を演りました。個人的には、現代劇「剣」で演った女子大生役が一番気に入ってました。市川さんが大変可愛がって下さったんだけど、当時私は身長が168(センチメートル)もあってね、突き抜けてたんです(笑)。ニューフェイスの卒業写真を撮る時も、私だけ膝を折らなきゃ(フレームに)入らなかったくらいで。
―――
映画「ガメラ対バルゴン」における、長身で可憐でナイスバディな島娘役は、やはり印象的です。本郷功次郎さんを甲斐甲斐しく看病して…。
賀川
 言葉を喋れない娘でね、この役はよく覚えてます。あと、「〜バルゴン」以外にも社長の秘書役でガメラ・シリーズに出ています。島娘の時はまだ18歳ですよ。色気もなくてクソガキで…(笑)
―――
言葉を発せられないという設定上、台詞がない分、高度な「目の演技」がかなり必要とされた特殊な役でしたね。今観直しても、この少女の感情が観る側にも伝わってきて、「若いのに大した女優さんだな…」って思いました。
賀川
 ありがとうございます。でね、肌を黒くメイクしたら、監督に「ホントに似合うねぇ〜!」って言われました(笑)。島の娘役で同期生がいっぱい出ているんですけど、私は江波杏子さんの妹分的な役で、江波さんや本郷さんとの絡みが多かったですから、「ああ、同期生達とは違う役なんだなぁ」って思ったら、カメラの前ですごく緊張しました。かえって同期生達に気を遣っちゃった思い出があります。とにかく本郷さんが本当にお優しい方で。この間も勝新太郎さんの七回忌でお会いしたばかりなんですが、「ゆき絵は変わんないなぁ〜!」と仰ってくださって。本郷さんや江波さんは大スターなのに、少しも偉そうになさらないし、そもそも大映の現場は、「あの人はスターだから」という特別扱いはなくて、みんなで和やかにご飯を食べるような所だったんです。
―――
当時若手の賀川さんにも、フランクに接してくださった…。
賀川
 そうそう!あの市川雷蔵さんも、スッピンでいらっしゃると、保険の外交員のオヤジさんみたいな感じで(笑)。昔のスターさんはお高くないですよ。
【“女の業”を演じた東映本編】
―――  その後68年5月、「徳川女刑罰史」で東映と正式に専属契約を結ばれ、晴れて「東映女優さん」となられましたね。68、69、70年と、この頃は大変な数の東映本編に出演されていらっしゃいますが、この頃の作品で印象的なものは?
賀川  その頃は、石井輝男監督の所謂「性愛路線」に乗って出てましたけど、それ以外にも怪奇シリーズ、歌謡シリーズなんかにも出ていました。私が一番好きなのは、「日本暗殺秘録」(69年)です。鶴田さんや(高倉)健さん、藤純子さんや三益愛子さんほか東映オールスターキャストだったんですよ。
―――  大御所・片岡千恵蔵さんも出ていらっしゃいましたし、すごく豪華な一本でしたね。その直前には「明治・大正・昭和 猟奇犯罪史」で主演、阿部定さん役を熱演されていらっしゃいます。
賀川  あれは、すごく難しかった…。「私の歳で出来るかな?」と思ったんだけど、何とか演りました。
撮影前に阿部定さんご本人にお会いして、対談したんですよ。とても素敵なおばあさんで、ホントに小柄な方なんです。阿部さんは私を見て、「こんなに背の高い方が(私の役を)演るんですか?」って言ってましたけど(笑)、多分昔はすごくイイ女だったんだろうなぁ…と思える方でした。(当時の対談写真を指し示しながら)これが阿部定さん。東映にお座敷を用意してもらって、ご本人とお話をして、ちゃんと役づくりをしました。東映は当時、結構私に力を入れてくれたんですね〜(笑)。
―――  世間一般的に、「阿部定=毒婦」というイメージで捉えられていたと思うんですが、そういう人物を演じるにあたって、ご苦労された点は?
賀川  私は(事件当時の)阿部定さんを知らないわけじゃないですか?撮影当時、私もまだ若かったから、ひとりの男をそこまで深く愛して、(男性の局部を)ちょん切って持ち歩く…という感情が、どうしても理解出来なかった。「そこまでするか?」って。私がご本人だったら、そんな男はすぐに忘れて、次の男と恋をしちゃうよ。でも昔は、そういう一途な女性がいっぱいいらしたんですね。そりゃ犯罪を犯したことはイケナイことですけど、純粋だったんじゃないでしょうか?阿部定さん(関連)の本もたくさん読みました。私は、(阿部定さんを)毒々しく汚らしく演じたくなかった。彼女が純粋に相手を想っていたところを一生懸命演じました。だから裁判で延々と証言していくシーンが好きです。台詞が長くて、独りで延々と喋ってるんだけど、「(阿部定さんの本意を知ってもらう為には)このシーンが一番大事だから、ちゃんと演らなければいけないな」って思いました。今も大好きな作品ですね。
―――  日本映画史上、おそらく最初に阿部定さんを演じた賀川さんだけに、思い入れも特別だとお察しします。さて、69年10月だけで、賀川さんご出演作が「日本暗殺秘録」「不良番長」「恐怖奇形人間」と3本もあるんですが、コアなファンに人気が高い「江戸川乱歩シリーズ・恐怖奇形人間」、静子役についてお訊きします。
賀川  「静子」は自分らしくない役だったんですけど、石井輝男監督が毎回私を指名してくださるので、演らせて頂きました。自分の色じゃない役だと思いながら、半分ちょっと自分色に染めさせて頂こうと考えて演りました。要するに、私は脚本の静子ほど強欲で好色じゃないですから…。(脚本では)確かにそういう女なんですけど、私自身はそういう女じゃないから、(賀川雪絵としての)素の部分を僅かに残して、敢えてしつこくギラギラ演らなかったんです。石井監督とは和気藹々とやらせて頂きましたけど、暗黒舞踏の土方さん達の一団とだけは、一線を引いて離れていましたね。なんか独特の世界を持っていらっしゃるじゃないですか?現場では、あの方達だけ離れてお昼ご飯を食べていらっしゃいました。「俺たちの世界に入ってくるなよ!」みたいな無言の圧力を感じましたね。でも、自分たちの世界をあれだけ芸術的に表現出来るのは、やっぱり凄いと思いましたよ。
―――  ほか、共演の方で特に印象的な方は…?
賀川  私は小池朝雄さんが大好きで、仲が良かったんですよ。主演の吉田輝男さんはハンサムで、小池朝雄さんは演技派。…そう!一度「吉田輝男と賀川雪絵はデキてる」って、週刊誌に書かれたことがあったんですよ(苦笑)。勿論全然そんなことはないんですよ。だけど吉田さんはハンサムなスターさんだから、書かれるのも慣れていて笑っていらっしゃるから、「こっちは迷惑ですよ!」って言ってやったことがあります(笑)。小池さんとは映画やテレビのお仕事も結構やっているんですけど、山城新伍主演の映画で詐欺師の夫婦役もやりました。小池さんはお人柄も素晴らしい方です。
―――  撮影中のご苦労について、お教えください。
賀川  私が水の中で溺れるシーンがあったじゃないですか。あれは本当に恐かった!!私、全然泳げないから。「よ〜い、スタート!」で水に潜ったけど、もう苦しかった〜。イヤだったけど、もう演るしかないんで…。「ワンテイクでやってもらえないなら、二度と(水に)入りませんから!」って言って。「東シナ海」(田村正和・渡哲也主演)っていう映画の撮影で、船が転覆して溺れたのが、トラウマになっているんですね。静子が水中で、もがいてますけど、あれは半分本当に溺れてますね。
【『子連れ狼』撮影秘話】
―――  70年代に入りますと公開本数も減り、映画界のパワーにも衰えが見えてきました。当然俳優さんたちの活躍の場が、スクリーンからテレビ画面へ移っていくわけですが、賀川さんゲスト作では、『子連れ狼』(73年・日本テレビ)第一シーズンの傑作「鳥に翼獣に牙」が、非常に印象深いです。
賀川  はい、覚えてますよ。大五郎とお風呂入りました(爆笑)。宿場にならず者が来て、私がみんなの前で(萬屋)錦之介さんと寝るよう、強要されるお話でしょ?
―――  そうです。最近DVDソフトが発売されて、賀川さんと錦之介さん、そして文学座の太地喜和子さんの演じたキャラが、ジャケットに載っていました。今度(DVDソフトを)プレゼントさせて頂きますね。
賀川  え〜♪太地喜和子さんとは、お友達だったから、嬉しい(笑)! 『子連れ狼』のロケは、もう寒くて寒くて寒くて…。あれは池広一夫監督も裏で笑ってましたけど、現場で錦之介さんが着物を脱いだら、その下から自前の毛糸のステテコが現れて、みんなに大笑いされてました。それとお風呂のシーンではテストからずっと入りっぱなしですから、のぼせちゃってのぼせちゃって大変でした。寒いから、最初のうちは「温か〜い♪」って喜んでいたんですけど、そのうち汗がダラダラ出てきて。大五郎も可哀相だった。洗い場で洗ってあげてる時に、寒くてガタガタ震えてましたもん。彼(西川和孝氏)もその後色々ありましたけど…(苦笑)。錦之介さんとは東映撮影所ですれ違うことはあったんですが、「背の高いあの娘(こ)は誰だ?」と、私に興味をもってくださったそうで。『子連れ狼』で初めて錦之介さんと一緒にお仕事をさせて頂いたんですが、「大丈夫ですか?寒くないですか?」って。ラブシーンでも自然に着物をかけてくださったり、すごく気を遣ってくださる優しい方でした。
―――  撮影所で賀川さんを見初めた(?)錦之介さんの個人的な意見が、当該エピソードのキャスティングに反映されたかも知れませんね(笑)。
賀川  なんか…判らないですけど、確かに名指しでお話が来ましたね(照笑)。
―――  私情がかなり混じったキャスティングといいますか…。
賀川  そうかも(笑)。でもすごく優しく声をかけてくださって、「飲み物はいかがですか?」って仰ってくださったり。私なんか子どもの頃、錦之介さんの時代劇映画を観て育ったじゃないですか。やっぱり東映全盛期の大スターですから、その方と一緒に仕事ができるなんて夢のようでした。