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○こちら特撮情報局 特撮ロケ地巡り |
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○ 第15回 特撮ロケ地レポート
『愛の戦士 レインボーマン』第17話ロケ地 静岡県裾野市「裾野市中央公園・五竜の滝(ごりゅうのたき)」 |
第15回 特撮ロケ地レポート 『愛の戦士 レインボーマン』
第17話ロケ地 静岡県裾野市「裾野市中央公園・五竜の滝(ごりゅうのたき)」
特派員:奥虹
取材日:2008年4月某日
今回紹介させていただくロケ地は、静岡県指定天然記念物でもある風光明媚な「五竜の滝」である。第17話、トラック爆発の爆風で見知らぬ滝まで吹き飛ばされたタケシと追跡者・ヘロデニア三世の邂逅シーン、滝のすぐ下流の河原ではダッシュ2&7と怪奇生物ヘドロンの戦闘シーンなどが撮影されている。
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◯『愛の戦士
レインボーマン』第17話「妖術・人間化石!!」あらすじ |
死ね死ね団の罠から逃れたダッシュ7(演.水谷邦久氏)の様を水晶玉で見ていた魔女イグアナ(演.塩沢とき氏)は、殺人プロ3号・ヘロデニア三世(演.江見俊太郎氏)と4号・アイスリーを召還した。滝でダッシュ7と対峙したヘロデニアは壺から怪奇生物ヘドロンを出現させると、河原でたじろぐダッシュ7を襲わせる。ダッシュ7の“ビーム”“不動金縛りの術”、ダッシュ2の“火炎の術”で果敢に挑むレインボーマンであったが、強敵ヘドロンにはそれすらも通用しない。退路を絶たれたダッシュ7は滝壺に逃れた後に洞窟を通り、南朝貴族の隠れ里へ出た。そんなタケシの前に赤い鞠をつく愛らしい少女・星っ子(演.斉藤理花氏)が現れたが、彼女は口と耳が不自由だった。戦いの連続で疲弊していたタケシは星っ子も敵ではないかと疑心暗鬼になるが、そんな自分をすぐに戒める。南朝貴族の子孫・若を護る農家の老婦人・きみ(演.大原百代氏)から食事を受け取った星っ子はタケシのいる廃屋へ戻るが、注意深いタケシはそれとは入れ違いに、きみから南朝の隠れ里の情報を収集していた。親切なきみは「“鎮守の森”には鬼がいるので絶対に行くな」と注意を促す。“鎮守の森”が死ね死ね団のアジトだと睨んだタケシは神社へ赴くが、妨害ビームで立ち入れず、駆けつけた星っ子とともに一時退散する。“M作戦”の生命線である偽札の運搬を指示するお多福クイーン(演.レナッタ・ヘラルド氏)の許にヘロデニア三世が現れた。M作戦遂行のため確実なるレインボーマン抹殺を促すクイーンに、ヘロデニアは「絶対にレインボーマンを逃さない」とうそぶく。翌朝再び鎮守の森に赴いたタケシはダッシュ7に化身するが、アジト入口ではヘロデニアが待ち構えていた。怪奇生物ヘドロンが液体から個体になるまでの時間差を突いたダッシュ7は、ビームでヘロデニアに深手を負わせるが、ヘロデニアは生命を省みずヘドロンを繰り出す。致命傷を負ったヘロデニアはヘドロン3体でダッシュ7を包囲するが、ダッシュ7はヘドロンの弱点である壺を破壊。その刹那ヘロデニアとヘドロンは霧散した。お多福会アジトを目指して神社の階段登るダッシュ7だが、死ね死ね団員たちのボウガンと、星っ子の正体・アイスリーが待ち構えていた…。
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◯裾野市中央公園・五竜の滝(ごりゅうのたき) |
五竜の滝(ごりゅうのたき)※静岡県裾野市ウェブサイトへは静岡県裾野市千福にある黄瀬川にかかる五条から構成された滝で、静岡県指定天然記念物である。高さは約13メートル。下流から向かって左側の主流三条の滝を「雄滝」、右側の支流二条の滝を「雌滝」と称し、それぞれ左から雪解・富士見・月見・銚子・狭衣と名づけられている。約一万年前の富士山の噴火によって形成され、玄武岩溶岩流の断面を観察することができることにおいても貴重。新田次郎の小説「蒼氷」の中にもこの滝が登場している。
『愛の戦士 レインボーマン』(第17話)では、トラック爆発の爆風で見知らぬ滝まで吹き飛ばされたタケシ(演.水谷邦久氏)と追跡者・ヘロデニア三世(演.江見俊太郎氏)の邂逅シーン、滝のすぐ下流の河原ではダッシュ2&7と怪奇生物ヘドロンの戦闘シーンなどが撮影されている。ヘドロンに苦戦したダッシュ7は一旦滝の濁流に飛び込み退避。化身を解くとタケシの姿で洞窟を彷徨い洞窟を脱する。「洞窟から出て、今いる場所が何処か解らず、いぶかしがる科白シーン」のみ、五竜の滝の「雌滝」近くにある岩場が撮影されている。つまりタケシの脱出経路は、劇中「五竜の滝々壺」→「滝壺内部の洞窟」→「洞窟出口」→「南朝貴族の隠れ里」ということになるが、実際は「五竜の滝々壺(静岡県裾野市)」→「滝壺内部の洞窟(国際放映か東宝撮影所内のセット?)」→「洞窟出口(静岡県裾野市)」→「南朝貴族の隠れ里(東京都町田市下小山田町)」という道程でシーン編集されている。
同所では『忍風戦隊ハリケンジャー』第1話(2002年2月放送)で、主人公たちの修行地としてロケが行なわれており、JAE所属・小野友紀氏演じるハリケンブルーが、滝下の水面を走るようにして敵戦闘員たちを銃撃するシーンなどが撮影されている。また「五竜の滝」の下流にある「鮎壺の滝」では、古くは黒澤明監督の名作映画「七人の侍」(1954年公開)、近年は映画「少林少女」(2008年公開)の撮影が行なわれている。
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←吊橋の上から三条の「雄滝」をみる。右から3尾目の青いこいのぼりの後方辺りが、ダッシュ2&7とヘドロンの戦闘シーンが撮影されたポイントである。浸食のため、36年前の戦闘ポイントはほとんど水中に没している。
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→吊橋を渡り切った辺りから「雄滝」を望む。画像手前の支流は「雌滝」によるもの。三条の滝の右側手前がダッシュ2&7・ヘドロン戦の撮影ポイント。ダッシュ7に扮する水谷氏やヘドロンのスーツアクター氏、撮影スタッフ諸氏は、この「雌滝」支流のブロックを渡って撮影ポイントへ移動したと思われる。
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←こいのぼりの右1〜2尾目辺りがダッシュ2&7・ヘドロン戦の撮影ポイント。怪奇生物ヘドロンはヘロデニアの壺の中から現れ、滝を下ると、レインボーマンがいる辺りの岩を攻撃し化石にしてしまった。ヘドロンの高い戦闘能力の前には、もはやダッシュ2の“火炎の術”すら無力であった。
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→ヘロデニア三世役の江見俊太郎氏は、画像左の「雄滝」の上からダッシュ7を見下し、己が勝利を確信する微笑を浮かべた。
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←ヘドロンの圧倒的な戦闘能力に苦戦したダッシュ7は、一旦滝の濁流(中央の滝)に飛び込み退避した。三条「雄滝」の奥には洞窟があり南朝貴族の隠れ里へと繋がっている…という設定だが、実際滝の後方にあるのは溶岩の壁のみで、洞窟は存在しない。
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→静岡県指定天然記念物「五竜の滝」を紹介する看板。滝と富士裾野の絶景は若山牧水や新田次郎など多くの文学家に愛された。
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←こいのぼりの後方に「雌滝」をみる。昨年の台風の影響で地盤が脆弱になった影響で、現在「雌滝」周辺は立ち入りが禁止されている。ヘドロンに苦戦したダッシュ7は一旦滝の濁流に飛び込み退避。化身を解くとタケシの姿で洞窟を彷徨い洞窟を脱する。「洞窟から出て、今いる場所が何処か解らず、いぶかしがる科白シーン」のみ、五竜の滝の「雌滝」近くにある岩場で撮影されている。
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→ヘロデニア三世役・江見俊太郎氏が実際に立っていた溶岩。設定上、河原で死闘を繰り広げるダッシュ2&7とヘドロンをヘロデニア三世はこの視点で観ていたことになる。滝の高さはおよそ13メートルで、足を滑らせれば生命の危険にも関わる。(命綱を着用していらしたのかも知れないが)危険な場所での撮影であったにもかかわらず、涼しげ且つ憎らしげなお芝居でヘロデニア三世役を全うしてくださった、故.江見俊太郎氏に心から敬意を表したいと思う。
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◯あとがき |
魔女イグアナが招請した殺人プロフェッショナル6人のうち4人は、市販商品であるモンスターマスクが撮影に使用され、残念ながら何とも言えないチープ感を醸し出していた。翻って欧州の紳士よろしくクラシカルなシルクハット・杖・マントで身を包んだヘロデニア三世の姿は、新東宝の本編などでダンディな敵役を数多く演じていらした江見氏だからこそ画になった。かくして殺人プロのリアリティは、大月ウルフ氏と江見氏の安定した演技に救済された(『レインボーマン』撮影会では、既にヘロデニア三世のくだんのコスチュームが披露されているが、江見氏のスケジュールの都合か安川剣友会メンバーと思しき方が代役を務めている。レコード・ジャケット掲載のヘロデニアは、衣装と俳優が異なるNG版)
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1999年1月、ヘロデニア三世役・江見俊太郎氏(故人)にインタビュー取材させていただいた際、江見氏が当時のスケジュール帳をご持参くださり、「富士の裾野の滝での撮影は1972年12月の第一週、(神社での撮影を含め)一週間ほどかかったね」と、懐かしそうに語ってくださったことを思い出す。テレビ時代劇『水戸黄門』などでは、やや好色で知的な悪代官役が多かった江見氏だが、俳優の権利向上・生活向上・反戦平和のための活動取り組みについて語るときには、静かながらも熱さを感じさせる方だった。ご病気で急逝されてからもう5年が経過するが、五竜の滝を訪れたとき、江見氏のあの穏やかな微笑を思い出し、込み上げるものがあった。
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