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○こちら特撮情報局 特撮ロケ地巡り |
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○ 第2回 『愛の戦士
レインボーマン』第17・18話ロケ地 東京都町田市「上根神社・大泉寺」編 |
【南朝ゆかりの里を訪ねて 『レインボーマン』ロケ地との奇妙な歴史的接点】
『愛の戦士 レインボーマン』第17・18話ロケ地
東京都町田市下小山田町「大泉寺・上根神社」 南朝隠れ里ロケ地に隠された史実
特派員:奥虹
取材日:2007年10月17日
“M作戦”(精巧にして大量のニセ札を流通させることで深刻なインフレを起こし、経済を荒廃化)を画策する死ね死ね団。ミスターKは、M作戦と並行してレインボーマン抹殺のため、魔女イグアナに殺人プロフェッショナルを差し向ける命令を発していた…。第17話「妖術・人間化石!!」、第18話「星っ子大変化」では、死ね死ね団アジトを探索するレインボーマン、それを阻止せんとする殺人プロ・ヘロデニア3世、アイスリーとの死闘が描かれる。
第1クール“キャッツアイ作戦編”のロケ地は、横浜外人墓地周辺をもってマカオとされたり、あるいは都内に集中していたり、極めてモダンな場所がチョイスされることが多かったように思う。翻って第2クール“M作戦編”の中盤のロケ地は、日本人の帰巣本能に訴えかけるような、とりわけ土着的な景色が多かったと思う。
因みに、ニセ札をバラまく宗教団体“おたふく会”の新拠点“参覚寺”は、東京都調布市の“深大寺”、江見俊太郎氏演じるヘロデニア3世とレインボーマンが対峙する風光明美な滝は、静岡県裾野市の“五竜の滝”である(ヘロデニア3世役・江見俊太郎氏インタビューを参照)。
今回は、南朝子孫の隠れ里の人々が恐れる鎮守の森(実は死ね死ね団アジト)のロケ地となった“旧・上根(かさね)神社”と“大泉寺”(東京都町田市下小山田町)をレポートする。
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○東京都町田市下小山田町「旧・上根(かさね)神社」 |
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←小田急線・唐木田駅より南方約2キロメートルに位置する“上根(かさね)神社”は、1660年建立、大泉寺の鎮守・宇津社が鎮座し山中の小山田城跡にあったが、2005年、地元氏子総代らによって、大泉寺門前西側の隣接地に再建立された。
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→当該回に登場する旧社自体は、三社が合祀され1965年に建立されたものであるため、『レインボーマン』撮影時(江見氏の言によれば1972年12月第1週)には比較的新しく見えていた。しかし現存はしていない。旧社は劇中の映像を確認するかぎり、大泉寺内の観音堂に非常に似ているが、屋根の形状が異なっているため、旧社自体が移築されたわけではないようだ。
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←ヘロデニア3世とレインボーマンが2度目に対峙する神社の石段は、1990年代に新しく組まれたようだが、社が移築された時点で放置されている。劇中、ヤマトタケシがくぐる石段中腹の鳥居、および死ね死ね団の妨害光線が発せられる設定の一対の狛犬は、現在撤去されている。
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↑南朝の隠れ里から再び鎮守の森に出向いたヤマトタケシは、社に上る石段を見上げ、ダッシュ7に化身。妨害光線を退けながら慎重に歩を進める。“上根神社”の額がかかる社を背に高らかな笑いを発するヘロデニア3世はマントを翻し、石段最上段からダッシュ7を見下す。いよいよ2度目の血戦だ! ヘロデニア3世の背景にあった社は、現在秋草が繁茂する空地となり、左後方には撮影当時にはなかった墓地が確認できる。
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←初戦で苦しめられたヘドロンには致命的な弱点があることを看破したダッシュ7。「ヘドロンが固定化するためには一定の時間を要する」という弱点をヘロデニア3世に告げる。尚も勝ち誇るヘロデニア3世はヘドロンを出現させ、石段下方のダッシュ7に立ち向かわせる。
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→その頃、鎮守の森に巣食う“魔界の者”を駆逐すべく立ち上がった南朝隠れ里の人々は、社の入口に集う。そして不毛な勘違いから、ヘドロンではなくダッシュ7を“魔界の者”として攻撃し始めた。その挙げ句、村人の若者はヘドロンの攻撃により石化して果ててしまうのであった。
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←ダッシュ7のビームにより右胸に致命傷を負ったヘロデニア3世は、石段下の広場までジャンプ、ダッシュ7を迎え討つ
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→「ヘドロンが消滅すればお前(ヘロデニア)も死ぬ」と指弾するダッシュ7に、「死ぬまでにはまだ時間がある」と、あくまで戦意を崩さないヘロデニア3世。3体のヘドロンを出現させると、三方位からダッシュ7を取り囲み石化させようと目論む。
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←ヨガの呪文を唱え石化を防御するダッシュ7は、ヘドロンの壺を破壊し撃退。するとヘロデニア3世はうつ伏して絶命し、蒸発して果てるのであった。ヘロデニア3世・レインボーマン決戦の場所は、撮影当時未舗装の土地であったが、現在はアスファルトが敷かれ、大泉寺・上根神社を訪れる人々の駐車場となっている。
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○東京都町田市下小山田町「大泉寺」 |
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→『レインボーマン』当該エピソードは、南北朝動乱で敗走した南朝の子孫が隠れ住む山村が舞台であるが、ロケ地である大泉寺・上根神社を歴史的にひも解いた時、そのなり立ちに南北朝動乱が少なからず関係していたことに驚かされる。
大泉寺が開かれたこの地には、もともと小山田城(1171年築城)があったが、寺は城主・小山田有重とその一族の供養のため建立された。1336年の南北朝動乱の際、足利尊氏らの海路進撃に対して、南朝軍は摂津で防戦。南朝派・新田義貞が絶体絶命となった時、自らの馬を義貞に与え、代わりに戦死したのが小山田太郎高家とされる。応仁の乱の頃、関東管山内上杉氏筋の長尾氏によって小山田城は陥落し、小山田氏は四散。城が荒廃した後に(1429〜40年頃)大泉寺が建立され、1660年、その地に上根神社(旧.宇津社)が建立された。
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←脚本の伊東恒久氏が、一見『レインボーマン』の世界観とは不釣り合いな南北朝動乱の敗者の隠れ里を、敢えてその舞台にしたことは、すこぶる興味深いが、ロケハンに出向いたであろう山田健監督らが見つけたロケ地が、南朝派・小山田一族ゆかりの地であった史実には唸らされた。
ヤマトタケシ役を熱演された水谷邦久氏が、いみじくも「『レインボーマン』の映像の基礎を築いたのは、山田健監督だと思う」と発言なさっていたが、南朝ゆかりの山村をリアルに表現するため、歴史的にも整合する南朝ゆかりの里をロケ地に設定したとすれば、山田健監督の緻密な撮影プランには舌を捲くほかない。
特撮ロケ地探訪の醍醐味は、案外こんな発見をさせてくれるところにあるのかも知れない。
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