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○こちら特撮情報局 特撮ロケ地巡り
 
 第32回 特撮ロケ地レポート 『愛の戦士レインボーマン』
第34・35話ロケ地 神奈川県三浦郡葉山町「森戸神社・みそぎ橋」


『愛の戦士レインボーマン』
第34・35話ロケ地 神奈川県三浦郡葉山町「森戸神社・みそぎ橋」

特派員:奥虹
取材日:2008年10月某日

 今回紹介させていただくロケ地は、調査委員会代表として来日したアリシア連邦国・ダリンジャー大統領補佐官がプライベートで訪れた観光地として、撮影に使用された。設定では"箱根・伊豆方面"とされている。

◯『愛の戦士レインボーマン』第34話「真空竜巻の術」あらすじ

 
 モグラート1号の起こした津波は、東京都民一千万人の逃げ場を完全に奪った。ダッシュ7(演.水谷邦久氏)は"真空竜巻の術"で津波を逆流させ押し返すと、水面を元に戻した。避難の際父親とはぐれた少女・八重(演.杉野公子氏)は、津波を押し戻す7を見つけ駆け寄るが、そこにはエネルギーを失い倒れるタケシがいるばかりだった。八重の看病で目を覚ましたタケシは、海運仮設事務所近くでヨガの眠りに陥る。八重は避難する人々に「レインボーマンが津波から助けてくれたの」と訴えるが、それを聞きつけたDACがタケシの行方を訊ねる。一方紳士に変装したミスターK(演.平田昭彦氏)は、オルガとともに記者会見現場にいた。「日本は危険な国だ」という世論の真偽を確かめるため、アリシア連邦国のダリンジャー大統領補佐官(演.オスマン・ユセフ氏)が調査委員会代表として来日。Kはダリンジャー氏と警護SP2名(演.所雅樹氏ほか)の写真を確保し、人間複写装置で偽者を造ろうと目論んでいたのだ。「レインボーマンは天使のよう」と言う八重にタケシは和むが、突如背後からDACが襲って来た。八重の面前で化身できないタケシは肉弾戦でDACに挑み苦戦するが、無事父親・中道(演.久野四郎氏)の許へ八重を送り届けた。ダリンジャー氏の身辺に危険が迫っていることを察知したタケシは、宿泊ホテルへ駆けつけるが、ダリンジャー氏は既に伊豆・箱根へ観光に出発していた。日本の美しさに触れたダリンジャー氏は、「日本を貶めようとしている人間がいるのではないか」と考え、真実に迫る決意をする。二人の警護SPを殺害し入れ替わった偽警護SP(DAC)を引き連れ、Kとオルガ(演.藤山律子氏)がダリンジャー氏の前に現れた。しかもKはダリンジャー氏の偽者をも伴っていた。上空から孤立無援のダリンジャー氏を発見した7は、間一髪偽者たちを駆逐すると、バズーカ砲で攻撃してくるDACに対し"念力バリア"でダリンジャー氏を護る…。

『愛の戦士レインボーマン』第35話「姿なき黒い手」あらすじ


 DACの魔手から救われたアリシア連邦国・ダリンジャー大統領補佐官(演.オスマン・ユセフ氏)は、ダッシュ7(演.水谷邦久氏)に「『日本は危険な国ではない』というレインボーマンを信じる」と語る。かくして死ね死ね団の要人暗殺による日本孤立化作戦は失敗をみた。その頃オルガ(演.藤山律子氏)はDAC訓練を指導中のロリータ(演.皆川妙子氏)のもとを訪れ、「Xゾーン破壊作戦に必要な特殊火薬を隠密に運搬する」というミスターKの作戦を伝えていた。人間複写装置を用いDAC隊員をヤクザ・黒木(演.山口譲氏)と生き写しに変え、怪しまれず特殊火薬を運搬しようというのだ。恋人・淑江(演.伊藤めぐみ氏)と"どんぐり園"で昼休みを楽しんでいたタケシは、「火薬工場爆破事故は何者かが故意に火薬を爆発させた可能性あり」と報じるラジオニュースを聞き、地底戦車・モグラートの影を感じ取り、園を飛び出した。そしてダッシュ6に化身し火薬工場地下を探索した結果、モグラートが火薬を運び出した痕跡を発見する。勤めを終えた淑江を待ち伏せていたタケシは淑江に詫び、明日の淑江の誕生日には必ずデートをすると約束する。さらに帰り道、ヤッパの鉄(演.山崎純資氏)に出会ったタケシは、鉄から「自分と瓜二つの人間が悪事を働いている」という信じ難い話から、死ね死ね団の策謀を 察知する。DACが化けた黒木と鉄に接近したタケシだが突然斬りつけられ、偽者たちも逃走した。ダッカー戦闘機によるダム爆破など、事態は益々悪化の一途を辿っていた。そんな折、偽者黒木の誤解から特殊火薬運搬の日時・場所を告げられた(本物の)鉄は、事件をタケシに知らせるため"どんぐり園"を訪ね淑江に伝言を依頼する。デートをすっぽかされ拗ねた淑江は、鉄からの伝言をタケシに伝えることを躊躇していた。「レインボーマンは宇宙から来たスーパーマンではない。ロボットでもサイボーグでもない。人間なんだ。俺も一緒に戦わなくてはならない!」と真摯に語るタケシに対し、淑江も澄んだ瞳で真実を伝える。火薬積込みのため第四埠頭へやって来た偽黒木たちを追い、7が到着。ヤッパの鉄も共に戦う。その戦いを静観していたオルガ・ロリータは、鬼神にも似たレインボーマンの圧倒的な強さを観て一旦退却した。火薬倉庫は大爆発を起こし、死ね死ね団の作戦はまたも潰えるのだった。

◯森戸神社(神奈川県三浦郡葉山町堀内1025)

 
森戸神社(神奈川県三浦郡葉山町堀内1025)

 1160(永歴元)年、伊豆に流された源頼朝が源氏再興を伊豆三島明神に祈願。1180(治承4)年、天下統一を成し遂げた頼朝が、この地に三島明神の分霊を勧請したのが始まりとされている。三浦・北条・足利・徳川など諸氏の崇敬を受ける、由緒ある葉山の総鎮守。海の安全と豊漁を祈願する「潮神楽」(6月16日)、神輿が町中を練り歩く秋の祭典「例大祭」(9月8日)などの祭事がおこなわれる。

森戸神社本殿

「森戸神社本殿」。鎌倉時代を起源とするため、猿田彦面・鼓胴・横笛など多くの社宝が伝わっているが、殊に南北朝時代の作品とされる翁面は県重要文化財に指定されている。大正6年10月の台風で境内の松が枯死するまでは、鳥居から本殿まで美しい松林が続いていたという。本殿そのものは『レインボーマン』の撮影には直接使用されていないが、隣接する駐車場が「戦いを終えたダッシュ7が自動車に乗り込んだダリンジャー氏と語り合うシーン」(第35話)で使用されているため、一瞬だけ本殿の側面が映り込んでいる。

 

森戸神社裏、海岸に迫り出すように生えている巨木の「ビャクシン(別名:飛柏槇)」。1184(元暦元)年、源頼朝が参拝した際に三島明神から種子が飛来、発芽したものとされる。神社の神木とされるこのビャクシンは、幹の周囲が約340センチメートルもあり、葉山町天然記念物に指定されている。劇中ダリンジャー氏とSPが石段を下ってくるシーンで、一瞬だがビャクシンの一部と碑が映り込んでいる。

森戸神社裏
 
みそぎ橋 その1
みそぎ橋 その2


森戸海岸と森戸神社境内をつないでいる朱塗りの「みそぎ橋」。古来より森戸浜がお祓いの霊所で禊が行なわれたため、この名がついたようだ。同橋は"かながわの橋百選"に選ばれている。劇中ダリンジャー氏は、二人のSPと共にこの橋を渡りながら絶景を満喫。美しい景色を守る日本人の高い精神性を評価し、「日本は危険な国だ」という偏見を改める。ダリンジャー氏とSP2名が「みそぎ橋」を渡るカットの近影に下がり松がインサートされているが、現在もその松の樹は健在である。

石段
ビャクシンの記念碑


ダリンジャー氏とSP達は、神社裏手の坂にある「ビャクシン」(画像右)の記念碑から石段を下ってくる。石段の途中ダリンジャー氏が嗅いだのは白いヒアシンス、SP1(演.所雅樹氏)が嗅いだのはオレンジ色のグラジオラス。劇中この石段を下りきり岬へ向かう流れだが、実際はこの石段を下り切ると、「戦いを終えたダッシュ7が自動車に乗り込んだダリンジャー氏と語り合うシーン」(第35話)が撮影された神社の駐車場へと行き着く。

グラジオラスの花弁から噴出した毒ガスで悶絶し、やがて息絶えた本物のSP1の背後から偽SP1が現れ、巧みにすり替わる。この場所は石段の途中を岬方向へ十数メートル降りた辺りで、実は花の香を嗅いだ場所から離れているのだが、シーンが上手く繋がっており違和感がない。

 


本物のSP1が倒れた坂の途中辺りから観る、沖合の菜島の赤鳥居と灯台は絶景である。更にここから脆弱な石階段を下ると、偽SP1と本物のSP2が合流した「千貫松」の岩の真正面に行き着く。

◯あとがき

 
  調査委員会代表として来日したアリシア連邦国・ダリンジャー大統領補佐官は、プライベートで"箱根・伊豆"(設定上の観光地)を訪れる。実際に第34話Bパートでは、森戸神社シーンの導入部として、静岡県伊豆市"土肥温泉"方面から撮影された"駿河湾から望む富士山"の景色が、ワンカットのみインサートされている(おそらくはバンクフィルム)。しかし実際には"箱根・伊豆"でロケは行なわれていない。これは撮影スケジュールと予算面の事情(故.衛藤公彦プロデューサーの言「(『レインボーマン』は)制作費調達でかなり苦労した作品」)を反映してか、世田谷区砧の国際放映からほど近い神奈川県南東部の葉山町が選定された…と推測される。加えて『レインボーマン』とは同時期、国際放映つながりで高視聴率を記録していた『太陽にほえろ!』のコネクションがプラスに機能したと思われる。『太陽に〜』主演・石原裕次郎氏の代表作、映画「太陽の季節」「狂った果実」のロケ地は葉山町であり、石原プロ関係者の口添えにより『レインボーマン』の葉山町ロケが実現した可能性もある。実際、森戸神社裏手には1989年、裕次郎氏の顔レリーフ入り「石原裕次郎の碑」が建てられており、森戸神社と懇意であったことが窺える。