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○こちら特撮情報局 特撮ロケ地巡り
 
 第21回 特撮ロケ地レポート 『愛の戦士 レインボーマン』
第12・37・49話ほかロケ地 神奈川県川崎市多摩区「二ヶ領宿河原堰」


『愛の戦士 レインボーマン』
第12・37・49話ほかロケ地神奈川県川崎市多摩区「二ヶ領宿河原堰」

特派員:奥虹
取材日:2008年3〜4・6月某日

 今回紹介させていただくロケ地は、行方不明の兄・タケシの身を案じて堰で佇むみゆきを、キャシーたちが自動車に押し込み誘拐するシーン(第12話)、河原の護岸ブロックのところでタケシが化身するシーン(第37話)、マスクドKがダッシュ7に電流ロープを放つシーン(第49話)などの撮影に使用された。

◯『愛の戦士 レインボーマン』第37話「Xゾーン破壊命令!!」あらすじ


  東南アジアとヨーロッパ調査団が搭乗した飛行機が撃墜された。死ね死ね団戦闘機・ダッカーの仕業だ。アリシア連邦国機が次の標的にされたが、ダッシュ7は“太陽フラッシュ”でダッカーを撃墜せしめた。ミスターK(演.平田昭彦氏)はダッカー飛行隊責任者・キャシー(演.高樹蓉子氏)に撤退を認め、ダイアナ(演.山吹まゆみ氏)には“Xゾーン作戦”用の火薬調達を命令したが、苛立ちの収まらないキャシーは、レインボーマン暗殺を失敗してきたオルガ(演.藤山律子氏)・ロリータ(演.皆川妙子氏)を責め挑発する。その頃タケシ(演.水谷邦久氏)はひとり商店街を徘徊していた。DACが日本人に変装し暗躍している現状を憂い、通りかかった淑江(演.伊藤めぐみ氏)にすらオルガ(偽淑江)の姿を重ね怯えていたのだ。そんなタケシに淑江は「タケシさんはもっと強い人だったはず」と、励ますしか術がなかった。二人を尾行していたオルガは、公園で語り合うタケシ・淑江を消音銃で狙う。タケシは銃の標的を自分へと誘導すると一瞬の隙を突き7に化身、オルガにキックを喰らわせ退散させた。タケシは「信じられる女性(ひと)と少しでも永くいたい」と気持ちを吐露、淑江も笑顔でうなずいた。その頃ロリータは人間複写装置でDAC隊員をレインボーマン化し、本物と戦わせようと目論むが失敗。オルガ・ロリータのコンビでタケシ抹殺を遂行することを誓う。翌朝、公園を歩くタケシを オルガ・ロリータがバイクと銃で急襲、攻撃をかわすタケシに巻き込まれ、10人以上の通行人が巻き添えで死亡した。タケシは残虐な死ね死ね団への怒りを新たにする。一方ミスターKは広島型原爆と同等の破壊力をもつ“スーパーニトロン”を用いた“Xゾーン作戦”を着々と進行させていた。多量の石鹸・石炭を原材料とするスーパーニトロン確保のため、ダイアナには石鹸の買い占めを、キャシーには石炭発掘人員の確保を命じる。経済恐慌のなか、破格の支度金での炭坑夫募集に人々は殺到、そのなかにヤッパの鉄(演.山崎純資氏)の姿もあった。淑江を誘拐しタケシを爆破地点まで誘導しようと目論むオルガ・ロリータだが、肝心の脅迫状を“どんぐり園”の前に落とし、誘拐も未遂に終わる。巡り巡って鉄から脅迫状を入手したタケシは、罠と知りながら7に化身し猫岳山頂へ向かう。しかしオルガ・ロリータが空を往くレインボーマンを銃で狙っていた…。

◯『愛の戦士 レインボーマン』第49話「燃えろ 大勝負!」あらすじ


  オルガら四大幹部を葬ったレインボーマン(演.水谷邦久氏)は、「彼女たちもミスターK(演.平田昭彦氏)の野望の犠牲者である」と悼む。寵愛するオルガを失ったミスターKは怒りをあらわにし、DAC隊にレインボーマン殲滅の命令を下す。河原を歩くタケシを発見したDAC隊はマシンガン・ナイフ・手榴弾でタケシを攻撃。ダッシュ7に化身したタケシは“遠当ての術”で対抗するが、多勢に無勢で苦戦する。7は一旦空中に逃れるが、マグネット・チェーンを撃たれ、雁字がらめのまま地上に墜ちる。“太陽の剣”で反撃する7に対し、参戦したマスクドKが放った電流ロープと鞭が圧倒、とうとう7は拘束される。「日本人は目先の利益しか考えない。そんな奴らを護る価値がどこにある?」と問うKに対し、7は「人間の真心を信じる」と答える。その様子を上空から発見したゴッドイグアナ(演.曽我町子氏)は、7を魔界ゾーンに拘束。困惑するKはゴッドイグアナに共闘を持ちかけるが、ゴッドイグアナは「(Kは)娘・イグアナの仇の片割れだ」となじり共闘を拒否、あまつさえDACを催眠術で翻弄したまま魔界ゾーンに帰還する。拘束していた7を矢で攻撃するゴッドイグアナ。7はダッシュ5(黄金の化身)に化身すると、“黄金フラッシュ”の太陽エネルギーでゴッドイグアナを本来の姿(老婆)に戻し、その隙に河原へ帰還する。5は“黄金フラッシュ”でKとDACを翻弄すると、7で肉弾戦を展開 。圧され気味のKはDACを残し、背中にロケットを背負いアジトまで逃亡、7もそれを追った。アジトでKを待っていたのは、死ね死ね団アフリカ基地から派遣された、ブードゥー魔術を駆使する魔術師・ドクロマンであった。「魔術により蝿へと姿を変え、換気口からアジトへ入り込んだ」というドクロマンの実力に懐疑的なKだが、 “透視の術”でゴッドイグアナの隠れ処を探し当てたドクロマンに、ゴッドイグアナ討伐を命じる。一方7はヨガの眠りに襲われ草むらで石化、追跡していたDACがそれを発見しKに報告する。ゴッドイグアナを隠れ処の瓢箪から追い出そうとするドクロマンだが、ゴッドイグアナはそれを全く相手にせずに、タケシの処刑場所へと移動。再びタケシを魔界ゾーンに拘束した。それを追ってきたドクロマンとゴッドイグアナが衝突、両者の実力は伯仲していた。一方タケシは7に化身し魔界ゾーンを脱出、Kと相対する。

◯二ヶ領宿河原堰

 
  多摩川河口から約22キロメートル付近で、右岸(川崎市宿河原地)より左岸(狛江市猪方地)へ多摩川を横断する堰。稲城川崎・二ヶ領用宿河原線へ安定して多摩川の水を供給する目的で建設された。『レインボーマン』をはじめ1970年代特撮諸作品に映り込む旧堰は、1947年12月に着工、1949年8月に完成した。現在の堰は1999年3月に完成。5門からなる起伏式ゲート、1門の引上式ゲート、両側の魚道からなる。
 行方不明の兄・タケシの身を案じて堰で佇むみゆきを、キャシーたちが自動車に押し込み誘拐するシーン(第12話)、河原の護岸ブロックのところでタケシが化身するシーン(第37話)、キャシーとDACが、木の上にスーパーニトロンの起爆装置とアンテナを設置するシーン(第38話)、マスクドKがダッシュ7に電流ロープを放つシーン(第49話)などの撮影に使用された。
 ここは『リュウケンドー』第34話、『行け! グリーンマン』第14話、『ウルトラマン』第15話、『ウルトラマンタロウ』第38話、『ウルトラマンレオ』第15話などの撮影でも使用されている。特に『ウルトラマンレオ』第15話「くらやみ殺法! 闘魂の一撃」では、ダン隊長がおおとりゲンを叱咤するシーンが旧堰の上で撮影されている。現存しない旧堰の構造を間近で確認できるという意味から、極めて貴重なエピソードと言える。
 なお、多摩川と堰の歴史については、多摩川を通じた文化交流・情報発信基地として設けられた「二ヶ領せせらぎ館」に詳しい。

 
小田急線陸橋近くの護岸ブロック

小田急線陸橋近くの護岸ブロック。二ヶ領宿河原堰近くの護岸ブロックは、近年自然石による頑丈な組石のものに取り替えられたが、陸橋近くのブロックは『レインボーマン』撮影当時と変わっていない。

 

撮影現場の対岸にある狛江市猪方では、1974年9月1日、台風によ
る増水で19戸が流出倒壊するという甚大な被害が生じた。画像の左方向を川沿い
上流に進むと、特撮作品ではお馴染みのロケ地“五本松河原”がある。

狛江市猪方
 
宿河原とは対岸の狛江市猪方から新堰を望む その1
宿河原とは対岸の狛江市猪方から新堰を望む その2

宿河原とは対岸の狛江市猪方から新堰を望む。旧堰は新堰よりおよそ50メートル上流にあった。建設省(当時)は「川幅いっぱいに敷設された農業用の二ヶ領宿河原堰(川崎市管理)によってブレーキをかけられた濁流が、堰に沿って直角に左岸の狛江側の堤防に激突、幅十数メートルもある堤を突き崩した」…と分析している。

『レインボーマン』撮影時にあった旧堰は、ちょうど手前の石と対岸を一直線に結ぶ線にあった。新しい堰(画像右)より上流におよそ50メートルの位置である。みゆきが行方不明の兄・タケシの身を案じて堰で佇むシーン(第12話)、マスクドKがダッシュ7に電流ロープを放つシーン(第49話)などは、当時の旧堰近くで撮影された。

二ヶ領宿河原旧堰
 
二ヶ領宿河原堰

スーパーニトロン起爆装置・アンテナ設置のため、C地点へやってきたキャシーとDACは、この辺りの位置に自動車を止めて任務にあたった(第38話)。タケシを包囲したDACがマシンガンを発砲するシーン、ダッシュ7とDACの戦闘シーン(共に第49話)は、1973年6月頃、草深い時期この辺りで撮影された。

 

死ね死ね団の策謀を知ったタケシは、護岸ブロックの上で化身する(第37話)。『レインボーマン』撮影当時、コンクリート製ブロックのみが打ち込まれていた(旧堰の形状については、DVD『レインボーマン』“キャッツアイ作戦編”解説書7ページ、タケシとDACの戦闘シーンのスチールに詳しい)。現在は一部の箇所を除き、自然石による頑丈な組石が護岸に用いられている。

護岸ブロック
 
◯あとがき

 
 
二ヶ領宿河原堰と多摩川宿河原周辺は、1970年代特撮番組での使用頻度が高いが、『レインボーマン』でも多分に洩れない。同第49話に至っては殆どのシーンが同所で撮影されている。
 川崎市役所ホームページ内「多摩区ふるさと写真ギャラリー」に詳しいが、『レインボーマン』放送当時、旧堰は子どもたちの格好の遊び場で、夏場には水着で水遊びをする姿が頻繁に見られたようだ。また、かつて多摩川両岸の移動(主に通勤・通学)には、船頭が操る小舟による渡しが重宝されたが、登戸・狛江を結ぶ“登戸の渡し”は1952(昭和27)年8月に廃止されたという。“菅の渡し”は、京王相模原線鉄橋の下流にあった川崎市内最後の渡しで、1973(昭和48)年8月に廃止。まさに『レインボーマン』クランクアップ翌月のことだった。写真資料や『レインボーマン』劇中映像と、現在の景色を較べると、この30数年の間に、多摩川の景色が少しずつ姿を変えていくことをひしひしと実感させられる。
 本レポート執筆に際し、永年多摩川と堰を見守っていらした「二ヶ領せせらぎ館」職員の皆様から、たくさんの貴重なお話をお訊きすることが出来た。職員の皆様には心よりお礼を申し上げます。