トップへ 新着情報へ インタビューへ 特別企画へ 交流室へ リンクへ
 
○こちら特撮情報局 特撮ロケ地巡り
 
 第13回 特撮ロケ地レポート 『愛の戦士 レインボーマン』
第9話ロケ地 東京都世田谷区「ハッピーロード尾山台(旧.尾山台商栄会)」


第13回 『愛の戦士 レインボーマン』
第9話ロケ地 東京都世田谷区「ハッピーロード尾山台(旧.尾山台商栄会)」

特派員:奥虹
取材日:2008年4月某日

 通称“三角ビル”で有名な「新宿住友ビルディング」建設途中の工事現場、ヤマトタケシは辛くも死ね死ね団の罠を脱した。そのタケシを追う死ね死ね団幹部・ダイアナは、女性団員Aにタケシの尾行を命じた。今回紹介させていただくロケ地は、タケシが喫茶ファンタジーで堀田・北村刑事と偶然かち合うまでの道程、女性団員Aがタケシを尾行する世田谷区内の商店街である。

◯『愛の戦士 レインボーマン』第9話「タケシを狂わせろ!」あらすじ

 
   鉄骨の下敷きになったと思われたタケシ(演.水谷邦久氏)だが、間一髪ダッシュ1(月の化身)の“蛇変化の術”で地下道へ脱出していた。その頃堀田(演.黒木進氏 現.小野武彦氏)は「自殺者62名」の新聞記事からタケシの危惧を思い出し、城西署の友人・北村刑事(演.長島寛氏)にコンタクトを取ろうとしていた。タケシが無事脱出したことを知ったダイアナ(演.山吹まゆみ氏)は、女性団員にタケシの尾行を命令。喫茶ファンタジーで堀田・北村刑事と偶然鉢合わせしたタケシだが、既にダイアナら女性団員たちが店内を固めていた。死ね死ね団の策謀について語るタケシに、北村は「一般の人間を殺すことに利益はない。今のままでは警察は動くわけにはいかない」と協力を拒む。ミスターK(演.平田昭彦氏)はタケシにキャッツアイ入りジュースを飲ませ狂人化させる作戦をダイアナに指示、まんまと薬物入りジュースを飲み干すタケシを見てダイアナはほくそ笑む。“ファッションショップK”を探し当てたタケシは「妹の下着を買いにきた」と客を装い店に潜入するが、店員に化けた女性団員に軽くあしらわれる。北村刑事と解散して間もなく、タケシにキャッツアイ中毒症状が現れ始めた。奇声を発しながら街中を千鳥足で歩くタケシを見て、堀田は青ざめる。さらに屋上から奇声を発するタケシを見るに至って、彼をともない松尾精神病院へ診察に訪れるが、診察を担当した川島医師(演.松本朝夫氏)は死ね死ね団の手先だった。精密検査を口実に特別病棟にタケシを拘束した川島は、看護婦に扮したダイアナと結託、特殊装置でタケシを完全に狂人化しようと電圧を上げる。「俺の手に日本人の生命がかかっているんだ!」。タケシは強靭な精神力でキャッツアイ症状と必死に戦うが…。

◯ハッピーロード尾山台(旧.尾山台商栄会)

 
 1949年「尾山台商栄会」と称し商栄会として発足、1979年に法人組織化にともない正式名「尾山台商栄会商店街振興組合」となる。1983年世田谷区ショッピングプロムナード整備事業計画に参加、1989年には商店街道路改造工事が完成し、商店街の愛称を「ハッピーロード尾山台」とした。
 第9話Aパートでは、歩くタケシを死ね死ね団女性構成員A(演.山崎知子氏)が自動車と徒歩で尾行している。当該エピソードでは、タケシが「神宮外苑道路周辺道路を歩くシーン」、「ガソリンスタンド横から環状8号線を渡り尾山台商栄会商店街入口へ入るシーン」、「尾山台商栄会商店街を歩くシーン」、「喫茶ファンタジーに入店するシーン」を編集して見せている。つまり劇中タケシの道程映像は、「明治神宮外苑周辺道路(新宿区・港区)」→「商店街内(世田谷区尾山台)」→「商店街前のガソリンスタンド」→「(再び同一の)商店街内」→「喫茶ファンタジー(世田谷区大蔵・用賀周辺)」の道順で編集されている。

ハッピーロード尾山台
 
ガソリンスタンド その1

死ね死ね団女性構成員Aの尾行にまったく気づかないタケシは、このガソリンスタンドの前を悠々と通り過ぎて行った。劇中に映るガソリンスタンドは「大協石油」であった。同社は1986年に三社合併し「コスモ石油」となる。

 

ガソリンスタンド近くでタケシの姿を確認した女性構成員Aは、スタンドを越えた辺りで急いで自動車を降り、以降は徒歩での尾行に切り替えた。ちなみに女性構成員A役の山崎知子氏は、大映ドラマ『なんたって18歳』(1971年 TBS)で岡崎友紀氏の同僚バスガイド役を演じている。

ガソリンスタンド その2
 
環状8号線

女性構成員Aが運転する自動車は環状8号線をスロースピードで往く。画像のやや右にある緑生い茂る古い民家は、劇中当該シーンにも映り込んでおり、現在も36年前の面影をそのまま残している。

 

環状8号線と交差する「ハッピーロード尾山台」(商店街)の玄関口。タケシはガソリンスタンドを背にして横断歩道を横断、商店街へと歩を進める。

ハッピーロード尾山台 玄関口
 
ハッピーロード尾山台 モニュメント

「ハッピーロード尾山台」(商店街)の玄関口にある洒落たモニュメント。当然『レインボーマン』が撮影された36年前には設置されていない。撮影があった1972年、ここは「尾山台商栄会」と呼ばれていた。

 

「美容専科つよしの店」は、位置も店名も36年前と変わらず劇中に映り込んでいる、息の永い美容室だ(ただし店のプラ看板は当時よりかなり高い位置に配置されている)。同店舗前では、女性構成員Aがタケシと危うくニアミスしそうになり、タケシが通り過ぎるまでやり過ごす…という緊迫したシーンが撮影された。画像は尾山台駅方面から環状8号線方向に望み、劇中タケシを監視する女性構成員Aの目線と同一。

 
環状8号線方面から尾山台駅方向を望む。電信柱後方にある花屋「小林」は劇中にも映り込んでいる。
商店街を尾山台駅方面から環状8号方向を望む
 
環状8号線方面から尾山台駅方向を望む その1
商店街を尾山台駅方面から環状8号方向を望む。いくつかの店舗で取材したが「36年前と比べて経営者が職種を変えた店舗も少なくないが、職種を変えないまま店舗の位置のみ大幅に移動した店もある」とのことである。実際に印鑑「美宝堂」の3軒先にある「肉の高野」は、『レインボーマン』撮影当時「美容専科つよしの店」の隣にあった。
 
環状8号線方面から尾山台駅方向を望む。ショッピングプロムナード整備事業計画に基づき、路面にはお洒落な煉瓦が敷き詰められた。また自動車が往来する道路を狭めて大幅に歩道を確保し、陽当たりを悪くしていた街路樹のイチョウが一部伐採された。1989年には商店街道路改造工事が完成し、商店街の愛称は「ハッピーロード尾山台」とされた。
環状8号線方面から尾山台駅方向を望む その2
 
環状8号線方面から尾山台駅方向を望む その3
環状8号線方面から尾山台駅方向を望む。タケシはこの辺りを尾山台駅方面から環状8号方向へ歩いてくる。商店街関連の尾行シーンでは編集の関係で、まずこのタケシ単体シーンがインサートされている。
 
「ハッピーロード尾山台」(商店街)の玄関口から環状8号線を経て、女性構成員Aが自動車を下りたガソリンスタンド辺りを望む。
ガソリンスタンド その3
 
◯あとがき

 
 宿敵レインボーマンことヤマトタケシ。そのタケシの動向を絶えず末端構成員が見張っている…という当該シーン。執拗なる秘密組織のリアリティを丹念に描いているという点で地味ながらも秀逸なシーンのひとつだ。東宝撮影所から直線距離およそ4キロメートルにあるハッピーロード尾山台(旧.尾山台商栄会)は、撮影スタッフとしても使い易いロケ地であったと思う。が、主人公ヤマトタケシの行動範囲をブレさせないため、日常的シーンの撮影は東宝撮影所・国際放映撮影所周辺のロケ地に限定、イレギュラーな尾行シーンなどはやや遠方に設定、さらに強敵との戦闘シーンなどは遠方でのロケを敢行し、距離的な奥行きを持たせていることに着目したい。
 第3クール「モグラート作戦編」以降、稲城市の南山崖山周辺、さらには多摩丘陵での土にまみれた戦闘シーンが大幅に増加するが、本クール「キャッツアイ作戦編」独特の“日常生活にヒタヒタと迫る脅威”が、市井の人々が往来する街中に潜んでいる…という稀有なシチュエーションは、本当に素晴らしい。そんなところにも注目しながら、今後さらにロケ地探訪を進めていきたいと思う。