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○こちら特撮情報局 特撮ロケ地巡り
 
 第27回 特撮ロケ地レポート
 『愛の戦士 レインボーマン』第8〜9話ほかロケ地 東京都新宿区「新宿住友ビルディング」


『愛の戦士 レインボーマン』
第8〜9話ほかロケ地 東京都新宿区「新宿住友ビルディング」

特派員:奥虹
取材日:2008年8月某日

 今回紹介させていただくロケ地は、ヤマトタケシが死ね死ね団女性団員らの仕掛けた罠によって、暗殺されそうになった西新宿高層ビルの工事現場(1972年当時)である。

◯『愛の戦士 レインボーマン』第8話「ひとりぼっちの戦い」あらすじ

 
 闇夜で死ね死ね団員たちのナイフ攻撃をかわしたダッシュ7(太陽の化身)であったが、目つぶしのアイパッチ攻撃に負傷し敗走する。ダッシュ6(土の化身)の“疾風土煙花の術”で一旦土中に逃れたタケシ(演.水谷邦久氏)は、さらに堀田の経営するガソリンスタンドへと逃れる。タケシは堀田(演.黒木進氏 現.小野武彦氏)から目の手当を受けながら、死ね死ね団の存在を必死で訴えるが、「被害妄想だ」と一笑に付される。その頃、死ね死ね団員たちは“おめん屋”という名のおでん屋台を出し、サラリーマンたちにキャッツアイ入りの日本酒をふるまっていた。タケシの危惧をよそに、死ね死ね団の日本人総狂人化作戦は着々と進行していたのだ。腫れた瞼で帰宅したタケシを心配し叱咤する母・たみ(演.本山可久子氏)であったが、タケシは“日本の平和”が自分の肩にかかっていることを実感し、正義の戦いへの気持ちを新たにする。「一晩に62名もの自殺者」という新聞記事を読んだタケシは、“ファッションショップK”のマッチが手がかりだと直感、淑江(演.伊藤めぐみ氏)に協力を求めようと決意。その頃淑江は、どんぐり園内に侵入してきたキャッツアイ中毒の中年男性に、首を絞めつけられていた。駆けつけたタケシは咄嗟に背負い投げで男を叩きのめすが、男は猫目のように瞳を光らせて死んだ。タケシは男がキャッツアイ中毒によって死んだことを語るが、淑江は信じようとしない。“愛する人々のための戦い”が受け入れられない現実に苦悩するタケシに、降臨したダイバダッタ(演.井上昭文氏)の魂は「己の道を信じ、貫くのだ」と諭す。一方ダイアナ(演.山吹まゆみ氏)たちは“美容ドリンクプリティ試飲会”と称し、公園で女性たちにキャッツアイ入りドリンクを配り始めていた。偶然通りかかったタケシを発見したダイアナは、女性団員に尾行を命令。罠の仕掛けられたビル工事現場に誘導されたタケシの頭上に、いま多量の鉄骨が降り注ぐ…。

◯『愛の戦士 レインボーマン』第9話「タケシを狂わせろ!」あらすじ


 鉄骨の下敷きになったと思われたタケシ(演.水谷邦久氏)だが、間一髪ダッシュ1(月の化身)の“蛇変化の術”で地下道へ脱出していた。その頃堀田(演.黒木進氏 現.小野武彦氏)は「自殺者62名」の新聞記事からタケシの危惧を思い出し、城西署の友人・北村刑事(演.長島寛氏)にコンタクトを取ろうとしていた。タケシが無事脱出したことを知ったダイアナ(演.山吹まゆみ氏)は、女性団員にタケシの尾行を命令。喫茶ファンタジーで堀田・北村刑事と偶然鉢合わせしたタケシだが、 既にダイアナら女性団員たちが店内を固めていた。死ね死ね団の策謀について語るタケシに、北村は「一般の人間を殺すことに利益はない。今のままでは警察は動くわけにはいかない」と協力を拒む。ミスターK(演.平田昭彦氏)はタケシにキャッツアイ入りジュースを飲ませ狂人化させる作戦をダイアナに指示、まんまと薬物入 りジュースを飲み干すタケシを見てダイアナはほくそ笑む。“ファッションショップK”を探し当てたタケシは「妹の下着を買いにきた」と客を装い店に潜入するが、店員に化けた女性団員に軽くあしらわれる。北村刑事と解散して間もなく、タケシにキャッツアイ中毒症状が現れ始めた。奇声を発しながら街中を千鳥足で歩くタケシを見て、堀田は青ざめる。さらに屋上から奇声を発するタケシを見るに至って、彼をともない松尾精神病院へ診察に訪れるが、診察を担当した川島医師(演.松本朝夫氏)は死ね死ね団の手先だった。精密検査を口実に特別病棟にタケシを拘束した川島は、看護婦に扮したダイアナと結託、特殊装置でタケシを完全に狂人化しようと電圧を上げる。「俺の手に日本人の生命がかかっているんだ!」。タケシは強靭な精神力でキャッツアイ症状と必死に戦うが…。

◯新宿住友ビル(新宿区西新宿2-6-1)

 
 住友不動産が経営する高層ビル。ビルディングの外観が三角(実際は六角形)であるため“三角ビル”とも呼ばれる。新宿高層ビル街の草分け的存在で、ビル内には多くの企業がテナントとして入り、上層部は飲食店(48階から52階)・展望室があり、観光スポットとしての顔も持つ。
 劇中、タケシの背後から銃を突きつけ、工事現場へと誘導しようとする女性団員。現在、都庁通りから新宿住友ビルへ階段で下りてくると神社があるが、当時その付近にあった階段から女性団員とタケシが下りてきた。劇中、二人の向かって右側に黒いプレハブハウスが確認できるが、これは作業員の詰所だと思われる(同プレハブハウスは、撮影当時西新宿一帯を映した航空写真からも確認できる)。工事現場内に誘導されたタケシは、女性団員の隙を突いて彼女を羽交い締めにする。そこへボウガンを放ってきた死ね死ね団々員。彼を追って工事中のビル内へ走るタケシの傍らに、「新宿住友ビルディング工事」を施行中である旨の白いプレートが確認できる。撮影当時の西新宿一帯の航空写真から解ったことだが、タケシは工事中の住友ビルを中央通り側から議事堂通り側へと回り込み、北通り側にあった重機に積まれた鉄骨で圧殺されそうになる(ただし、怯えるタケシと、迫り来る重機は別撮り)。
 『レインボーマン』撮影開始が1972年8月、台本2本同時進行・10日撮りのペースなので、同第9話撮影は同年9月上旬と思われる。ビル竣工はそれより1年6ヶ月後の1974年3月6日。

 
議事堂通りより新宿住友ビルを望む その1

議事堂通りより新宿住友ビルを望む。左が“ホテルハイアットリージェンシー東京”、右が“ホテルヒルトン東京”。

 
『レインボーマン』撮影当時、えんじ色の鉄骨を露出させていたビルも、1974年3月以降は涼やかなシルバーの塔屋となり、屹立している。

議事堂通りより新宿住友ビルを望む その2

 

中央通りから、都庁通りと交差する階段を望む その1

中央通りから、都庁通りと交差する階段を望む。

 

くの字型の階段も『レインボーマン』撮影当時は、中央通りと平行する直線型だった。第8話、タケシは背後から女性団員に銃を突きつけられたまま、この階段を降り、当時建設中だった新宿住友ビルの工事現場へと誘導された。

中央通りから、都庁通りと交差する階段を望む その2
 
ロケ地跡

ボウガンを放ってきた死ね死ね団々員を追って工事中のビル内へ走るタケシの傍らに、「新宿住友ビルディング工事」を施行中である旨の白いプレートが確認できるが、それはこの辺りと推測される。

 

都庁通りより新宿住友ビル(左)と新宿三井ビル(右)を望む。新宿三井ビルは1974年10月竣工。高さ225メートル。竣工当初、黒だった塔屋は現在白となっている。

都庁通りより新宿住友ビルと新宿三井ビルを望む
 
◯あとがき

 
 西新宿の高層ビル街は、弊サイトオフ会でも個人的にも度々訪れるエリアだが、『レインボーマン』撮影当時の航空写真や雑誌、ゼンリン住宅地図を再確認することで、今まで気づかなかった新しい発見に恵まれた。1972〜73(昭和47〜48)年は、淀橋浄水場跡がドラスチックな変化を見せつつある頃。1971年に京王プラザホテルが屹立するだけの浄水場跡に、住友ビル・三井ビル・KDDビル(現.KDDIビル)などが建設され始め、超高層化を遂げるのだが、その月々の景色の変化が実にエキサイティング! 普段何気なく利用している近代的な建築物が、人々の地道な作業の積み重ねで形成されていくことが、テレビドラマのワンシーンや関連書籍からリアルに伝わってきて、とても興味深く感じられた。これからも人が創る街の変化をじっくりと見守っていきたいと思う。
 『レインボーマン』をはじめ、1970年代特撮諸作品でも多用された「京王プラザホテル」「新宿中央公園」のレポートも既に完成しているので、これらは次回以降にご覧いただきたいと思う。